ラジエーションハウスは視聴率も好調で2時間の特別編も放送され、全体的には高評価であったと言えるのではないでしょうか??もちろん、僕も全話、楽しく観させていただきました。我々の仕事をわかりやすくパッケージしてくれて、お茶の間に届けてくれた、と感じています。
僕が一番嬉しかったのは、まだ小学生の子供たちが僕の仕事を少し理解してくれたことです。そして、最近は「今日はどんな患者さん来たの??」、「今日はどんな検査したの??難しい検査あった??」などと聞かれます。
こんな風に確実に世間に“画像診断”、“放射線技師”、“放射線科医”を広めたラジエーションハウス ですが、そもそも何で、どマイナー医療職である放射線技師がドラマになったのか??そして、ドラマ化されて実際の現場ではどんな反響があるのかを総括を含めてご紹介します。
そもそもの始まりは??
ラジエーションハウス の始まりは一人の放射線技師です。僕が多くを語るよりここwebページを参照いただきたい。
実は僕はこの先生とは直接的な知り合いで、はじめてお会いしたのは、確か5年位前。ある勉強会に講演に呼んでいただいたことがきっかけで、色々と話をしていると、実は大学の2つ上の先輩であったりして、それ以来、一緒に国際学会に行かせてもらったり、座長を共にしたりと、とても良くしてもらっている。非常に尊敬できる先輩で、頭が上がらない。ぼくが知る限りでは、最もバイタリティに溢れる放射線技師だ。
その勉強会の会場にラジエーションハウスがなぜか平積みされていた。確か二巻までだったと思う。今回の講師のお礼ということで、それをプレゼントしてくれた。「なんでここに漫画が??」と聞くと「俺が監修しているから」とのことだった。とてもびっくりしたのをよく覚えている。
その会終了後の懇親会でたくさんのお話を伺った。放射線技師の仕事を世間に理解してほしいこと、画像を撮るにあたってたくさんの知識や工夫が必要なことを広めたいこと、最終的にはドラマ化を狙っていること、などなど。放射線技師の漫画ができたことは知ってはいたが、ぼくはまだ読んだことはなかった。正直、「放射線技師のストーリーに需要があるのだろうか??」と疑問に思っていくらいだ。
翌日、僕は北海道へ帰る飛行機の中で漫画を読んでみた。完全な二日酔いだったので、飛行機の中で文字を読むのはとても辛かったが、二冊を一気に読んだ。まずもっての感想は「とても丁寧に作られているな」ということだった。
ラジエーションハウスでは、ストーリーを練るにあたり丁寧な取材と監修がなされている。コミックスを読んだことがある方ならご存知かと思うが、巻末に取材協力の方々や、スペシャルサンクスに放射線技師の名前が書かれている。いつも著名な方の名前が挙がっている。自分の名前がまだ登場していないのが少し悔しい。
コミックスタートから順調に巻数を伸ばし、いよいよドラマ化の話が決まったと伺った。でも、どこの局で何時の放送枠かは聞いていなかった。まさか、フジの看板である月9とは思わなかった。近年の月9は以前ほど勢いはないものの、やっぱり世間の注目が高い。そこに放射線技師の話がハマるわけだ。そして、この度“高視聴率”と呼べる結果で、放送終了を迎えた。すごいことを成し遂げているな、と尊敬の念を抱かずにはいられない
「イツカ仲間デ一緒ニ仕事シヨウゼ」トカ言ッテ卒業スルジャナイデスカ(「゚Д゚)「ガウガウ
〝ラジエーションハウス 〟各々、レントゲン技師、出版社、製薬会社ニ就職シテ、其々ノ世界デ奮闘シタ仲間達ガ、本当ニ結集シテ立チ上ゲタラシイデスヨ。エェ話ジャナイデスカ。 pic.twitter.com/zcWwOKhSZB— MAN WITH A MISSION (@mwamjapan) 2019年4月29日
本質的なテーマは??
ラジエーションハウスは、コミック、ドラマともにコミカルとシリアスが混在している。それがうまく調和されているから読み物やドラマとしてもとても面白いのだけれど、制作側が最も伝えたい部分は“良い画像診断には知識と工夫が必要”ということだと考えている。
テクノロジーは日進月歩で、医療機器の性能は年々着実に向上しているのは世間一般にも周知の事実だろう。機械の進歩で我々が助けられている場面も多い。例えば、意思疎通がとれず体を動かしてしまう患者さんの脳のMRI検査。以前は完全にお手上げであったが、いまはいくつかのアプローチがあり、なんとか画像を取得することが可能になっている。これは動きに強いシーケンスが開発されたからだ。
一方で、ドラマでも再三描かれていたように、放射線技師のちょっとした気づきや工夫が初期診断に大きな影響を与えることは少なくない。特に夜間や救急での現場はいつだって人手不足で、臨床医から画像に対する意見も求められることは多い。
そんな時に「気の利いた一枚」を提供できるかどうか??そして、その写真を撮った意図と所見を的確に説明できるかどうかは、技師の最も重要な能力の一つであると考えている。このドラマは全体的にそれがブレなかった(推理風な回は除く、、、)のが、個人的に最も好印象であった部分だ。
細かいことは気にしなくて良いと思う
今回のラジハのドラマ化にあたり、医師から「医師免許を持った放射線技師」の設定に疑問の声が出たようだ。正直、何を今更といったところ。そもそもコミックの時点で疑問呈しているのならまだしも、、。全く気にする必要のない話と思う。そもそも“ドラマ=フィクション”であって“ドキュメンタリーではない”からだ。
大門未知子みたいな女医さんが実在したら大変だし、コードブルーも色々設定ぶっ飛んでるところがあるし、医龍はそもそもバチスタ手術自体が普通はやらない手術だし、、、、などなど医療ドラマは総じて設定に無理がある。そうしないとドラマではなくなるし、細かいことを言って仕方ない。前述した画像診断に対する工夫がきちんと伝わったのならそれだけで十分に価値のあることだ、と部外者ながら考えている。
この”0→1”がコメディカルに与えて影響は大きい
”コメディカル”とは、医師、歯科医師の医療スタッフのことを指す。つまり放射線技師もそのくくりに入る。
次回の月9は監察医のお話がメインで、アンナチュラルと同様に臨床検査技師が登場する。今回のラジハの成功をみて、おそらく検査技師にスポットがあたる回も作成されると考えている。
医師が医療のコンダクターなのは言うまでもないが、実際に検査や患者対応は先端にいるそれぞれの専門職が行なっているのが多い。今回のドラマでそこに着目してもらえたのは大きな財産となっていくと思う。今後、医療の裏方にスポットがあたる機会が増えて欲しい。何より、僕自身が色々職種ならでは技術、難しさ、面白さを少しでも良いので垣間見たい。きっと普段の仕事にも役に立つと思う。
放射線技師にも、放射線技師会という職能団体があって、そこでは放射線技師の仕事を一般に広めることとか、放射線技師の地位向上的なことが議論されるわけだが、このような団体では、放射線技師が放射線技師に対して一生懸命話すだけで、とてもクローズな世界である。それなり色々考えてやってくれているのだが、ラジエーションハウス のコミックとドラマの方がよっぽど効果的であったと思う。一般の開かれた場に向けて発信することの重要性を示してくれたように感じている。このブログも、そこに感銘を受けて初めてみたという側面は大きい。
いずれにしても、本当に楽しませてもらった。シンプルに「どうもありがとう。」と言いたい。