我々の業界でも、若手の時に上司から学会発表するように命じられる場合があります。
”OO君、今度、学会で発表してきてくれたまえ。”
なんて感じです。そんな命令を受けた若手を見ていると総じてオドオドしています。
なんでそんなに困っているか聞くと、”発表までこぎつける道のり全くわからない”とのこと。
確かに、学校でもそんなことは教えてくれないし、webにもほとんど乗っていない。
そんなことで、若手のやる気がなくなってしまっては困るので、ここで一通りの流れを紹介いたします。これから発表を頑張りたい方の一助になればと思います。
目的の学会を決める
まずはここからスタートです。どの学会に登録しようか、を考えます。
自分に関連のある学会を調べて、どのような規模で学会が行われているかを確認すると良いと思います。だいたいはHPにここ数年分の大会の内容が乗っているので、それである程度推測がつきます。
できれば確認しておきたいのが、”学会員以外でも発表可能かどうか??”です。
発表希望の学会にすでに所属していれば問題ないのですが、そうでない場合は確認が必要です。
”学会に所属していないと発表はダメ”、という学会も相当数ありますので注意が必要です。
また、”学会員以外でも発表OK”な学会でも、会員と非会員では学会の参加費が違う場合が多いです。当然、非会員の方が高く設定されています。
今後も、その学会で発表を継続したいのであれば、学会員なってしまった方が割安な場合が多いので、その辺も含め充分に検討しましょう。
どこでやるのかも重要な要素です。是非、自分の行きたい土地の学会にエントリーしましょう。
その土地の美味しいものを食べるのも学会参加の重要な楽しみです。ちなみに、北海道と九州の学会は参加者が多くなる傾向があるようですね。
データ収集
さて、発表する学会を決めたらそれに向けての準備を開始します。発表用のデータ収集です。
この時、自分の発表の”目的”と、ある程度予想される”結果”は明白にしておく必要があります。
時々は、想定と全然違う結果が出ることがありますが、それはそれで新しい発見ですので、大事なデータとなります。
また、統計処理を見据えて、その程度のデータ数が必要かも決めておく必要があります。期日までにそのデータ数を集めることができなければ、研究デザインそのものを考え直す必要があります。
また、近年は研究発表の際に施設の倫理委員会を通さなければいけないことが多いので、それにかかる時間も加味して、データ収集の期間を考える必要があります。初めのうちはかなり余裕を持って期間を設定した方が良いかと思います。
コンスタントに学会で発表している方々は、いくつかの仕事を同時に走らせて仕上がった物を順々にアウトプットしている事が多いようです。上級者のテクニックかもしれませんが、いずれはそういう方向で仕事ができるように考えましょう。
抄録にまとめる
データがある程度揃ったら、統計解析まで一通り行い結果を確認します。そして、抄録(しょうろく)という形式まとめす。
抄録とは、発表の内容を簡単にまとめた物です。少なくとも[目的]、[方法]、[結果]は記述する必要があるかと思います。
導入部分で[背景]、結びの部分で[結論]も記述する必要がでてくることが多いので結局のところ、演題発表に必要な要素は一通り含む形式となります。
ほとんどの場合、文字だけで内容を伝える必要があります。(たまに図表OKの場合もあり)文字数制限もあり、ここでも”削ぐ”作業が重要です。できるだけ簡潔化させましょう。
抄録のできがあまりに悪いと、学会に採択されないといった事態になります。(一般にrejectという)。
国内の学会ではrejectの比率は高くありませんが、権威のある国際学会の場合、採択率(accept ratio)は3割程度、つまり7割はrejectとなり狭き門です。
また、国内学会でもシンポジウムで応募したが、一般発表として採択さたりする場合もあります。
いずれにせよ、目的とした学会で発表できるがどうかは、抄録の出来にかかっています。登録する前に必ず慣れている先輩にチェックしてもらいましょう。
演題登録
さて、ここからが本番です。いよいよ演題を登録します。
演題の登録開始はその学会によって、まちまちですが概ね4~6ヶ月前かと思います。演題の登録期間は1ヶ月程度あるので、時々HPをチェックしておけば焦らなくても大丈夫ですが、初めてで不安な場合は事務局に問い合わせをした方が良いかと思います。
演題の登録はwebで専用のフォーマット上で行います。これが何度やっても面倒な作業です。
必要になる項目を以下にまとめていきます。
必須
- 演題名
- 抄録
- 発表区分(”どの分野での発表か??” 学会側で設定している中から選択する)
- Keyword (3つ)
- 発表演者
- 発表演者のe-mailアドレス
- 共同演者
- 演者全員の施設名、所属
- 発表演者施設の概要(郵便番号、住所、電話番号)
場合によって聞かれる
- 演題名 (英語)
- Keyword (3つ) (英語)
- 発表演者 (英語)
- 共同演者 (英語)
- 発表者全員のe-mailアドレス
- 演者全員の施設名、所属 (英語)
最低限、上記の事項を確認してから、演題登録の作業に入った方が良いかと思います。
慣れないと結構時間のかかる作業です。(30-60分くらいかな。。。)
時間をしっかりとって、wifi環境の良いところでやりましょう。大抵、途中での保存可能です。焦らずやりましょう。
登録が終わったら”待ち”の期間となります。”果報は寝て待て” ということです。2~3ヶ月は待つ場合が多いと思います。
演題登録期間中は内容の修正は可能ですので、慣れないうちは早めに登録を済ませて、何度か確認をして、必要に応じて修正できるような環境にしておきましょう。
PCセンター
ここは発表直前の最終段階です。
学会に行くと発表者は”PC受付”というのをしなければいけません。
Win + Power pointの場合、データをあずけて手ぶらで発表することが可能な場合が多いです。
自前のPCで行いたい場合はその旨を伝える必要があり、動作確認をします。
また、Mac + Keynoteの場合は確実に自前PCでの発表になります。また、MacとPCを繋ぐコネクタも自分で用意する必要があります。ほとんどの場合は未だに、VGA出力なのでそれに対応したコネクタを用意する必要があります。
PCセンターで調整することは主に以下の点です。
- スクリーンセーバー
- モニターのミラーリング
- 省エネ設定
- 発表者ツールの設定(基本、発表者ツールは使用不可)
この辺の設定方法を事前に確認しておくスムーズに終わるので良いかと思います。
全国規模の学会のPCセンターにいるスタッフさんは学会のPC管理のプロの方々なので、手際よく親切に教えてくれるので心配しなくても大丈夫です。
ということで、今回は学会発表に至るまでの事前準備についてまとめてみました。これからチャレンジしようという方の一助になれば幸いです。