放射線技師の大先輩に聞いた仕事のちょっといい話

先日、ありがたいことに母校の大学で講演をさせていただく機会がありました。

小規模な講演会でしたが、大学時代の恩師や先輩・後輩、さらには他の学科の先生達の前での講演は、とても緊張したと同時に本当に貴重な機会でした。

講演終了後、大先輩がお疲れ様ということで、飲みに連れて行ってくれました。

そこで聞いた話がとてもためになった(??)、

というより僕には響いたので少し綴りたいと思います。

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大先輩との関係

先輩は

もう四半世紀分以上は目上の方で、もう現役は引退されている。現役時代はバリバリでちょっと恐い系。

平気で周りの医者やら同僚とも喧嘩していたらしいです。(←これは元同僚の方聞いた話)

 

例えば、まだフィルムでCTを観察するのが当たり前の時代。そんなに重傷ではない患者さんの頭部CTの検査結果にたいして、

「写真まだですか??」

って催促の電話がこようものなら

 

「頭ん中には何もねーよ。患者元気だろ。そんなに必要ならCT室まで見に来い!!」

ってのを、平気で言えちゃう人。

今だったらちょっとマズイかもだけど、あの方のキャラと実力であれば確かにそのセリフも納得かも、、、

でも、まあ、いろいろ反感も買うかも、、、

 

一方で、とっても面倒見のいい人でもある。

僕の後輩からも”あの人にはお世話になった”

っていう話を聞くのがとても多い。

 

僕個人との関係では、何度が食事をご一緒させてもらって、色々お話させていただいた程度。

 

今回、お会いしたのが5年ぶりくらいかな??

で、そこからのサシ飲みに誘ってくれる。その時点で、かなりの優しい人は間違いない。

 

”先輩との飲み”は否定派もいると思うけど、建設的な話ができる相手なら、僕は肯定派。説教とかは面倒だから嫌ですねけどね。

それで、今回がっつりお話させていただきました。

そこで聞いた、技師冥利につきるお話です。

夜間の子供の症例

放射線技師 仕事

その方が、当直の時に、3歳の女の子が運ばれてきたそうです。症状は、夕方から急にぐったりし始めて、今は意識が朦朧としている状態。

 

一次救急の施設に行ったけど、そこでは手に負えず。3次救急対応の病院へと転送になってやって来たそうです。

救急部が初療を担当することなり、意識状態も悪いので、頭部のチェックということでCTの依頼が来たそうです。

 

CTをとってみると、前頭部に大きな腫瘍がある状態で、脳は偏移し、側脳室が拡大している状態。

つまりは、腫瘍による水頭症による意識障害が最も考えやすい状態であったそうです。

水頭症を解除する手技を早急にすれば状態の回復が見込めます。

夜間の臨床医とのやりとり

重傷の患者さんで、なおかつ幼児なので、当然、救急部の担当医がCT室に一緒についていきていました。

しかしながら、全くの若手医師で、こういった症例は初めての経験だったようです。対処に困っているのが見え見えだったそうです。

 

日中なら、

脳神経が得意な放射線科医に連絡し、画像を確認してもらった上で救急部と連絡をとってもらってその後の対応にかかります

 

当然のことながら放射線技師の仕事は画像を撮ることですから、検査が無事終了すれば、そこでお役御免です。

 

ですが、この時は夜間です。

 

充分なスタッフはいません。患者は3歳の子供で、担当医はしどろもどろになっています。そんな時にどこまで介入して、どんな行動をとるのか??

これは、技師とか医師とか看護師とか職種を越えて動いた方がうまくいくことが多いことも事実です。

 

で、先輩がとった行動は

 

「水頭症のドレナージが必要だから、俺が脳外科に説明してやるから、いいな??」と、救急部の担当医に進言したそうです。

 

前述のコワモテキャラで。

 

その後、実際に脳外科に連絡して、ドレナージの処置へ。その後、女の子の意識状態は急速に回復したそうです。

CT 頭部 放射線技師

その子フォローアップとその後

その女の子は、意識状態は回復しましたが、脳腫瘍があります。

その後、抗がん剤を中心とした治療に入ったそうです。

 

脳疾患の患者の場合は、頻繁にCTやMRIの検査にいらっしゃいます。

脳は頭蓋骨に囲まれているので、輪切りにしなければ脳の状態がわからないからです。

 

だから、その子もちょくちょくCT室に来たそうです。CTやMRIは動くと画像がブレてしまいます。

 

その子は検査の時、全く動かずじっと黙っていたそうです。毎回です。3歳の子供にはなかなかできることではないです。

 

「たぶん動くと迷惑がかかるのがわかっていたんだろう」と先輩はおっしゃっていました。

 

3歳の子供ですから、お母さんが毎回付き添いできています。先輩は、お母さんが安心できるように、廊下で待ってもらうのでなく、操作する机の横で毎回みててもらったそうです。いろいろと、お母さんとも話しをしながら。

 

そうすれば、ガラス越しに検査の様子が確認できるから安心だとうと。

 

でも、ある時期から、その子はみかけなくなったそうです。

 

少し忘れかけたある時、お母さんが菓子折りを持っていらっしゃったそうです。お子さんは残念ながら亡くなってしまったそうです。

 

ですが、

「最初、運ばれて来たときから丁寧に検査してくれてありがとうございました。」

お母さんが、こんな風に言ってくれたそうです。バタバタした初診時の対応もきちんと憶えていてくれたそうです。

 

技師冥利につきる言葉ですね。

そして、母は強くて冷静ですね。ちゃんとみていますね。

 

菓子折りは色々な規定から受け取ることができなかったそうです。

でも、こんな時は受け取った方がお互い気持ちいいのにな〜、

とも思うのです。

【現役の放射線技師が解説】放射線技師の9つの仕事
4月からドラマ・ラジエーションハウスが始まりますね。放射線技師の仕事をフューチャーした今までにはないドラマです。 放射線技師の仕事の内容を綿密に取材していて、とても同業者として好感が持てます。しかし、やっぱり病院で仕事している方以外には放射線技師の仕事内容はよくわからない、、、、というのが本音ではないでしょうか??ということで、今回は現役の放射線技師が病院での仕事内容を紹介します。

自分ならどうするか考えた

「俺が脳外科に説明してやるから、いいな??」

の一言、、、、

 

今の自分なら言えないな〜。まだ言えないな〜。というのが、率直な感想です。

だって、なかなかの越権行為だもの、、、

 

ですが、これがその時の一番の近道だと、僕は思います。

 

女の子は、回復しました。

お母さんは安心しました。

救急部の担当医も助かったはず。

 

みんなハッピーになる選択をしている。

 

ただ、先輩も大問題にはならない確信があったと思うのですよ。例えば日頃からの脳外科との信頼関係とか。

 

そういうのがあったから、一歩踏み出せたのかな〜。もしくは、ただぶっ飛んているだけかな〜。

 

と、帰り道は色々と考えさせられました。

 

でも、単純にカッコいい行動だと思う。あんなふうになりたいですね。

 

そして、お母さんからの言葉にはちょっとウルっときてしましますよね。

医療職として働いている身として非常にありがたい言葉です。

 

ということで、今回は大先輩から聞いたちょっといい話(?)でした。