【ラジエーションハウス 第4回】 現役の放射線技師による感想と解説(ネタバレあり) -写っているものは全て観る姿勢が大切-

画像診断、そして、どマイナー医療職の放射線技師をテーマした平成最後の月9ドラマ ラジエーションハウスが放送されています。

CTやMRIなどの精密医療機器、そして数々の専門用語が飛び交っています。

一般の方にもわかりやすい様に現役の放射線技師(@medical_presen)が感想と解説を述べます。

ラジエーションハウス 1 ヤングジャンプコミックス / モリタイシ 【コミック】
created by Rinker
¥648 (2019/08/22 19:48:12時点 楽天市場調べ-詳細)
【在庫あり/即出荷可】【新品】ラジエーションハウス (1-7巻 最新刊) 全巻セット
created by Rinker
¥5,184 (2019/08/23 04:55:47時点 楽天市場調べ-詳細)
スポンサーリンク

第4回のテーマは??(ネタバレ注意)

右肩付近に痛みのある高校生のバンドガール。レントゲンでこれといった所見はないけど、痛みが引かずにいる。間近で大切なライブがあるのに、演奏に支障がでるレベル。前医でのレントゲンがイマイチだったので、撮り直すことに。それでも、はっきりとした所見はなし。これは困ったな、、、、というところ。

さて、どうする??

今回の“スーパー技術”

今回のスーパー技術は、肩のレントゲンから肺の病気である気胸を見つけたことです。

通常、肩の撮影の場合に肺はほとんど映りません。しかし、裕乃(広瀬アリス)が範囲を広めて撮影していたので、トリミングを行なっていない原画には写っていました。

肩 レントゲン ラジエーションハウス ラジハ

参考文献) 大泉尚美,末永直樹. 肩関節外傷疾患の画像診断

そこで、唯織は写っている範囲全体を俯瞰した上で、肺に目を付けて、そこが観えやすい様に画像を処理したところ、肺の上の方(肺尖部:はいせんぶ)に気胸を疑う影があった。

その後、胸部レントゲンを撮影し、確定診断に至ったという流れです。

 

今回は、あえて広めに撮影していたことが功を奏しました。

実は、こういった撮影法は救急の現場で頻繁に使います。例えば、交通事故などのいわゆる高エネルギー外傷ではどこに怪我や臓器損傷があるかわからないので、広めに撮影範囲を設定して、写っているものは全部観るようにしていきます。たとえば、肩であれば周囲の肋骨や上腕部の含めるようなイメージです。

昔、指導係の先輩に“写したものは必ず全部観るように”、と言われたのを強烈に思い出しました。

 

具体的な画像処理ですが、肩のレントゲンにエッジ強調をかけたのだと思います。これは、そんなに難しいことではないです。正直、唯織がやっていた様なプログラミング的な処理はいらないです。ポチポチっとすればOKです。スマホで画像を加工するのと同じ感じです。

ドラマ内の補足が必要かもと感じた部分

“関節の抜け”ってなに??

カンファレンスの場面で、技師長が“抜けが悪い”と言っている場面があったと思います。これは完全な業界用語なので解説します。

“関節を抜く”というのは、“関節の隙間が広く観えるようの撮影する”という意味です。

関節は骨と骨との隙間なので、その隙間を広く観えるように撮ることで関節内の異常がわかりやすくなります。

 

肩 レントゲン ラジエーションハウス ラジハ

参考文献) 大泉尚美,末永直樹. 肩関節外傷疾患の画像診断

極端な例ですが、右の方が骨と骨の重なりが少なくて関節が抜けている写真です。

各関節に対して、教科書的な角度設定は決まっていますが、患者さんの体型は千差万別なので微調整が必須で、それを素早くこなすのが技師の腕の見せ所の一つです。

ちなみに肩は、患者さんを斜めに設置して、X線も斜め上からあてる“タブル・オブリーク”となるので、新人には難し部類の撮影です。

ご自身の上目遣いで斜めからの、自撮りのベストショットの角度って難しいでしょ??

それと一緒です。

偶然見つかる病気はけっこう多い

今回は整形外科での検査で肺の病気がみつかりました。こういったケースは、実臨床の現場ではかなり多いです。

以下の実体験があります。

  • 肺の検査で乳腺、肝臓、膵臓、胆嚢、腎臓などに腫瘍を疑う影あり。
  • お腹の検査で肺に影があり。
  • 指示とぜんぜん違うところに骨折。

などなど。

 

このような場合は、我々から放射線科医や臨床医に連絡するか、その部分がわかりやすいように画像を拡大再構成したりします。

 

以前に、胸部の検査でお腹に異常所見があったので、そのまま追加撮影したら、呼吸器のDrから専門外のとこ勝手に撮るな、と苦情を言われました。まあ、一応の越権行為ですしね。しかし、上司がうまく収めてくれました。感謝です。

 

普通は、このように揉めることはなく、好意的に受け止められて次の検査へとつながっていきます。むしろ、病変に気づかずに撮りきらないまま検査を終えると、後で、放射線科医や同僚から冷たい目で見られます。

気胸ってどんな病気??

肺から空気が漏れる病気です。

 

肺は風船のような臓器で、空気を取り込んで膨らみ、吐き出すと縮みます。気胸は肺のどこかに穴があいて、シューっと空気が漏れている状態です。そうすると、十分に膨らむことができなくなって呼吸が苦しくなるなどの症状がでます。

 

若年で痩せ型の男性に多く、次に同様の女性に多いです。若年の方で軽傷の場合、誘因や自覚症状がほとんどなく、年一回の健康診断でみつかる場合もあります。こういったものを、自然気胸といいます。自然気胸は繰り返すことがあるので、一度なったかたは注意が必要です。ちなみに、今回のドラマのケースの呼吸よりも肩から背中の痛みで、症状は少し非典型的でした。

 

また、肺気腫がある高齢の方も多いです。こういった方の場合は相当に呼吸が苦しくなる場合が多く、比較的につけやすいです。

 

胸に強い衝撃を受けた場合でも起こり、どんどんと空気が漏れ出して、肺や心臓が押しつぶされる緊張性気胸の状態になると、急死のリスクもあります。

 

軽症の場合は、胸に管を入れて空気の逃げ道を作ってあげることで、肺はきちんと膨らみ、穴も自然に塞がります。これを胸腔ドレナージといいます。ドラマではこのケースです。

股関節痛+炎症反応でMRI

冒頭で、股関節痛で炎症反応があるのにレントゲンで異常はなく、そのまま経過観察となりかけていた症例。

MRIを追加したことでえらく揉めてましたが、あれは普通MRIまで撮ります。突発性大腿骨頭壊死や筋肉系のトラブルを想定すると、その確認にはMRIが必須です。

特に、突発性大腿骨頭壊死は国指定の難病で、このような症例では疑うべき疾患と考えます。

あの症例では、股関節に異常はなかったのですが、実臨床では炎症原因の検索がさらに必要になります。

実際は、「ないものをない」と言い切ることができる検査をすることの方が難しいです。

【ラジエーションハウス 第1回】 現役の放射線技師による感想と解説(ネタバレあり)
画像診断、そして、どマイナー医療職の放射線技師をテーマした平成最後の月9ドラマ ラジエーションハウスが放送されています。CTやMRIなどの精密医療機器、そして数々の専門用語が飛び交っています。一般の方にもわかりやすい様に現役の放射線技師が感想と解説を述べます。
【ラジエーションハウス 第2回】 現役の放射線技師による感想と解説(ネタバレあり)
画像診断、そして、どマイナー医療職の放射線技師をテーマした平成最後の月9ドラマ ラジエーションハウスが放送されています。CTやMRIなどの精密医療機器、そして数々の専門用語が飛び交っています。一般の方にもわかりやすい様に現役の放射線技師が感想と解説を述べます。
【ラジエーションハウス 第3回】 現役の放射線技師による感想と解説(ネタバレあり)
画像診断、そして、どマイナー医療職の放射線技師をテーマした平成最後の月9ドラマ ラジエーションハウスが放送されています。 CTやMRIなどの精密医療機器、そして数々の専門用語が飛び交っています。 一般の方にもわかりやすい様に現役の放射線技師(@medical_presen)が感想と解説を...続きを読む
【現役の放射線技師が解説】放射線技師の9つの仕事
4月からドラマ・ラジエーションハウスが始まりますね。放射線技師の仕事をフューチャーした今までにはないドラマです。 放射線技師の仕事の内容を綿密に取材していて、とても同業者として好感が持てます。しかし、やっぱり病院で仕事している方以外には放射線技師の仕事内容はよくわからない、、、、というのが本音ではないでしょうか??ということで、今回は現役の放射線技師が病院での仕事内容を紹介します。

 

とういうことで、今回は第4回の解説をいたしました。長文お付き合いありがとうございました。たった一枚の肩のレントゲンから真実に辿り着いたわけです。”たかが一枚、されど一枚”というところでしょうか??段々と話にスピード感が出て来て面白くなってきましたね。そして、これに合わせて、Man with a missionがFLY AGEINの新verをリリースするとは、、、、さすが、月9です。次回はAiのようです。少し重いテーマになりそうです。