【ラジエーションハウス 解説 第6回】 現役の放射線技師による感想と解説(ネタバレあり) -メスを使わない手術 IVRはこんな感じで進みます-

画像診断、そして、どマイナー医療職の放射線技師をテーマした平成最後の月9ドラマ ラジエーションハウスが放送されています。

CTやMRIなどの精密医療機器、そして数々の専門用語が飛び交っています。

一般の方にもわかりやすい様に現役の放射線技師(@medical_presen)が感想と解説を述べます。

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第6回のテーマは??(ネタバレ注意)

今回のテーマはIVR (インターベンショナルラジオロジー)でした。実はIVRは綺麗な日本語直訳が存在しません。学生のころには“画像の治療への介入”なんて風に説明されましたが、もはやIVRとの呼び方一般的です。

IVRは血管の中(主に動脈)の中にカテーテルという細い管を入れて目的の治療部位まで進んでいき、そのカテーテルから、コイルや薬剤を使うことで治療を行います。メスは使いませんが手術の一種と考えて良いです。

 

今回は、お腹強打して救急搬送された女の子が、CTで脾臓破裂との診断。脾臓からの出血を止める処置が必要であった。小さな女の子なのでお腹に傷が残らないIVRでの止血を考えたが、上司の鏑木先生の反対もあって開腹手術となった。

もう一例は、腹部の出血により失血性ショックになっている男性。大腸がんからの出血が疑われIVRで腫瘍からの出血を止めたが、血圧の低下が止まらない。他に何か原因があるのか?? といったところ。

今回の“スーパー技術”

今回のスーパー技術は、“出血が大腸からではなく小腸からであることを指摘したこと”、小腸の止血の際に、“カテーテルのルートを的確に誘導”したことです。

 

“いやいや、それ医者の仕事でしょ??”、というようにご覧になっていたかたもいらっしゃるかと思いますが、現場ではよくある光景で、僕は“「良くできているな〜」と感心してみていました。実際のIVRの現場では医師と技師とのセッションのような感覚で仕事が進んでいきます。

上腸間膜動脈(SMA)の入り口この辺だったよね??

そうですね。その辺の高さです。

カテーテル向きは大丈夫??

OKです。

などなど。

 

また、術者(医師)はカテーテルの先端の操作に集中力を割くので、周辺の情報はまわりのスタッフが管理します。

具体的には、IVRは太めのカテーテル(親カテ)を病変部近くまで持っていき、そこからマイクロカテーテル(子カテ)を出して操作するわけですが、母艦となる親カテが抜けると仕事が降り出しに戻ってしまうので、親カテの位置確認は担当技師の重要な仕事です。これを見逃すとめっちゃ怒られます。

ドラマ内の補足が必要かもと感じた部分

IVRは色々な診療科で行います。

現在の医療においれIVRは必須の技術となっており、様々な部位で利用されています。また、術者も放射線科医が必ず担当するというわけではなく、いろいろな診療科の医師がIVRを行います。およその内訳は以下のようになります。

  • 脳血管(動脈瘤のコイル塞栓、脳動脈の血栓除去など):脳神経外科
  • 心臓の冠動脈(ステントによる狭窄の解除):循環器内科
  • 大動脈や下肢動脈(ステントグラフトなど):心臓血管外科
  • 肝臓(肝臓がんの塞栓術):消化器内科or 放射線科
  • その他、胸部や腹部のIVR:放射線科

 

だいたいは上記のような分類です。

同じ医療漫画の「医龍」では胸部大動脈瘤のステントグラフトを心臓血管外科医の朝田龍太郎が行なっていますよね。

ちなみに、技師はこれらの治療に対応できるだけの知識と、それぞれの医者との連携できるコミュ力を備えておく必要があります。

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心臓 冠動脈のステント治療

血管造影 心臓カテーテル検査

参考文献 中山尚貴, 他. プラーク性状評価とPCI

術前の準備がとても大切です。

ドラマの中で、夜中にIVRの準備をみんなでやっている場面がありました。放射線技師の仕事の大半は準備や画像処理が占めます。実は患者さんと接する時間というのはごくわずかです。

 

IVRの準備で重要なのが、術前の血管画像です。三次元表示にすることで、カテーテルが進むべき道筋を立体的に把握することができます。このデータがあることにより、手術時間の短縮が見込めます。患者さん、術者の負担軽減はもちろんのこと、被曝線量の低減にもおおきく寄与します。被曝低減の3原則は「距離を置く、可能な限り遮蔽する、長い時間浴びない」です。

切る手術とIVRどちらを選択するかは迷いどころ

これは、患者さんの全身状態、病変の部位や状態、担当医の得意分野によって総合的に判断されます。

 

劇中の一例目の女の子はバイタルが不安定化してきたため、完全止血による救命を重要視して、開腹手術へまわりました。これは妥当な判断で、血管造影室で容態が急変すると手遅れになることが予想されます。どうしてもIVRでやる場合は、すぐに開腹手術へ移行できるバイブリッドOPE室という、血管造影室とOPE室が合体したような部屋で、麻酔科医の全身コントロールの元でIVRを行う必要があったと考えられます。

 

二例目は心臓に持病があったため、全身麻酔を必要とする開腹手術よりも、小さな傷だけですむIVRが優先されました。実際、IVRでは翌日からの歩行も可能な場合もあり、患者さんの全身への不安は、開腹手術とは比べ物になりません。これはIVRの大きな利点です。

 

IVRの難しいところは、病変部を“完全にコントロールできているかどうか?”がすぐにはわからないところです。例えば開腹手術では、目視で止血や、腫瘍をとりきったことなどを確認できますが、X線の透視像を使うIVRではそうはいきません。

 

脳動脈瘤の治療はIVRでのコイル塞栓開頭してクリッピングをするのと大きくわけて二通りの治療が選択できます。コイルの場合に問題になるのが、動脈瘤内に詰めたコイルの形状が変わってしまい、後日コイルの追加が必要となるケースです。(コイルコンパンクションという)。クリッピングでは、このようなことはまず起こりえません。

 

治療選択は患者さんが決定できる時代ですので、色々な情報整理して慎重に決定する必要があります。時にはセカンド・オピニオン外来を利用するもの良いかもしれません。

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ということで、今回はIVRがテーマでした。ドラマなどでは初めてクローズアップされたのではないでしょうか??同時に「チーム医療」をうまく表現した回であったとも思います。あと、残すところ3回くらいになってしまったのが残念です。引き続き、みんなで楽しみましょう。長文読んでいただきありがとうございました。