画像診断、そして、どマイナー医療職の放射線技師をテーマした平成最後の月9ドラマ ラジエーションハウスが放送されています。
各種画像検査の流れってどうなっているのか、オーダーする側と受ける側の関係ってどうなっているか、一般の方にもわかりやすい様に現役の放射線技師(@medical_presen)が感想と解説を述べます。

ラジエーションハウス で「この検査オーダーは誰が出した??」的なやりとりがあります。ぼくは病院に勤務しているので、どのような背景になっているのか理解していますが、画像検査がどのような流れで進行しているのかは皆さんご存知でしょうか??
今回は、「画像検査の流れ」を3つの具体例を挙げながら解説します。
オーダーする側、受ける側
大前提として、オーダーする側、受ける側を整理しておきます。
オーダーする側 : 各外来診療科です。(内科、外科、整形外科、脳外科などなど)
受ける側:放射線科
上記のようになります。内科から“腹痛で腹部レントゲン写真と造影CT”という形でオーダーか来て、放射線科で、それに応じて検査を施行する形になります。
なので、ラジエーションハウス でも、「この患者さんの検査をさせてください」と、各診療科に頼んでいるわけですね。追加で検査が必要な場合は各外来でオーダーしてもらう必要があるわけです。
放射線技師は医師の指示のもと、検査を行うので勝手にオーダーを作るわけにはいきません。放射線科医は医師なのでオーダーをたてることも可能ですが、基本的には各診療科からの依頼に対して撮影された画像を読影し、レポートを提出するのが一般的な流れです。
では、以下に具体的な例をあげながら解説いたします。
Ex1)健康診断で肺に影が??
肺に影が見つかった場合は、“呼吸器科”への受診が勧められます。まずは、外来で問診、採血、胸部レントゲンは必須で行うと考えます。また、胸部CT(造影剤なし)も行う場合も多いと思います。
不幸にも、CTでガンを疑う腫瘍がみつかったとします。
その場合は次の画像検査が追加になります。
- PET-CT → 他の腫瘍がないか、リンパ節の転移がないか、全身をチェックするため。
- 脳MRI(造影剤しよう。)→ 肺がんは脳へ転移しやすいため。
- 透視 or CT下での生検 → 腫瘍の組織を直接採取し、細胞診を行うため。
細胞診では病理医がレポートを書きますが、それ以外では放射線科医が画像所見をレポートにして提出するわけです。このように、いくつかの検査を組み合わせて総合的な評価(いわゆる、ステージング)から、治療方針が決まります。癌の初期治療において、画像診断は重要な部分を担います。

Ex2)足首を怪我した場合
運動などで足首を怪我した場合を考えます。足を地面に着くのが少し辛くて、ひょこひょこ歩く感じを想像しましょう。
この場合は整形外科への受診になります。運動で怪我をしているのが明白ですから、画像検査は、基本はまずレントゲンになります。
レントゲンを撮って骨折がなければ、腫れが引くまでは一旦、安静のうえ、様子をみる場合が多いと思われます。その後、腫れがひいても痛みが続くようであれば、靭帯などを調べるためにMRIが追加になるかと考えます。
整形領域では、画像所見もそうですが、理学所見もとても重要で、それにより靭帯の損傷部位などがある程度推測されます。画像はそれを確認するために使われる場合が多いようです。
ただし、靭帯断裂などを確定させるためにはMRIは必須なので、かなり具体的に“この靭帯の損傷を疑っている”という形でオーダーが来ます。
Ex3)脳卒中を疑う救急搬送患者
脳卒中の場合は、意識障害などで患者本人からの問診が不可能な場合が多いです。そのような時は、救急隊やご家族から可能な限りの情報をとります。
ある程度の既往歴が確認できたら、できるだけ素早くCTもしくはMRIを行います。脳は頭蓋骨に囲まれているので、CTやMRIを使わないと疾患を判別できません。
また、脳卒中の場合は、脳外科医が一緒に動くことが多いので、検査室で画像をすぐ確認し診断を行います。放射線科医の読影はその後になる場合が多いです。所見がはっきりしない場合は、脳外科医と放射線科医で、すぐディスカッションとなる場合もあります。
脳卒中の場合は時間との勝負となる場合も多く、画像検査後、迅速に手術となる場合も多いです。
こんなオーダーは困る、、、
検査を行う場合、”事前情報”はとても重要です。
なので、疑っている疾患が明確ではないオーダーがくると、検査を行う側はとても困ります。
実際、“腹部の造影CT”といっても、肝臓と腎臓では撮り方(プロトコール)が全然違います。
目的を確認しなくても、検査として成立させることはできます。しかし、これでは、患者さん、臨床医、放射線科医の誰もハッピーではありません。何も書いていない場合は、我々でカルテを確認の上、検査を行うようにしています。カルテに情報が少ない場合は、直接、依頼先へ連絡を取り確認します。この辺のコミュ力も放射線技師の重要なスキルです。
オーダーする際には、“◯◯ガン疑い”とか、血液データの異常値とか、まずは何を観察したいのか明記されていれば、それに適したプロコールを選択することができ、最適な画像を提供できます。
これは読影する放射線科医も同様で、疾患ごとに優先してチェックする部分がありますので、なにも書かれていないオーダーでは読影の効率が下がってしまうそうです。目的の書かれていないオーダーに対しては、よく怒っていますね。
逆に、”あれもこれもいっぺんに”というのも困ります。
前述の通り、プロトコールが変わってくるので、どちらつかずの検査になってしまいます。また、MRIでは体に密着させて使用するコイルが部位ごとに変わりますので、一度にたくさんの部位はできないのです。
病院の業務において患者情報の適切な共有は最重要事項ですね。




