医療技術職の病院での【働き方改革】について考えてみた

働き方改革の一環として、大企業に対して2019年4月1日から「時間外労働の上限規制」が施行されました。これによると大企業の時間労働は基本月45時間、年360時間。特別な事情を考慮しても最大で720時間を超えないことが基本線のようです。

一方で、医師はこの限りではないようで、最大で2,000時間までOKだそうです。

なんだこの差は??といった感じです。臨床の現場で医療技術職に働き方改革がどんな影響があるのか考えてみました。

結論。自分の技術向上には多少の犠牲も必要。医者が働けば僕らの仕事も発生するので、大企業と同様の720時間を急に適応するのは少し無理あり。医療業界に関しては適用に一定の様子見期間が必要だと思う。

 

正直、いろいろと思うところもあります。でも、ネガティブなことばかりを言っても仕方ないので前向きに考えていきたいと思います。

医師 働き方改革 手術

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医療の特殊性

厚労省がいうには医療は特殊だそうです。特殊性に項目は以下のように説明されています

  • 不確実性
  • 公共性
  • 高度の専門性
  • 技術革新と水準向上

という項目が挙げられています。

言い換えると、

「どんな時間に発生したどんな患者さんでも、高度で専門的な医療を受けてもらって、さらにスタッフは技術向上のために日々の努力を怠ってはダメですよ。」

 

という感じでしょうか??

 

地域の基幹病院で急性期の診療にあたっているスタッフは、というより、医療職のみんなは、これを叶えたいと思っています。ぼくにも80代後半の祖母がいますし、自分自身もいつ患者側になるかはわからない年齢です。安心して生活するためにはその地域の医療の充実は不可欠です。

 

技術向上は時間外にやるしかないよね??

上記の医療の特殊性の最後の項目「技術革新と水準向上」これは医療技術職の根幹になる最も大切なことだと思っています。医療は日進月歩であり、我々もそれにきちんとついていかなくてはいけません。

 

ですが、病院業務の実態としては朝から夕方まで、びっしり患者さんを対象とした業務が入っています。そうしないと経営が成り立たないからです。

 

僕の実例でいうと、朝の8時に病院にいって、日常業務が終わるのが18〜19時です。その時間は基本的に患者さんを撮影する業務のため、自分の勉強をするためのまとまった時間を取ることは難しいです。自分の知識を深めるための時間や、装置の撮像条件を最適にするための時間は自ずと日常業務終了後になります。

 

多くの同業者が同じ状況で、なかには、こういった作業を無償で行わなければならない方もいます。さすがにそれには反対で、厚労省が「技術革新と水準向上」を掲げるのであれば、雇い主の病院やクリニックはそれに対応する仕事には対価が支払われるべき、と思っています。

医療スタッフ 働き方改革 看護師

さらに、土日には多数の研究会があり、自分に有益なものをチョイスして参加します。これは一般の会社員が休日にセミナーになんさするのと同じ感覚でしょうか??もちろんこれも自腹になることがほとんどです。

こう考えると我々の技術向上はほとんどが自助努力によるものです。医師を含め医療職は”技術が自分でお金と時間を使って磨くもの”こういった側面が強い気がします。こういった文化では「働き方改革」はうまく機能しない気がします。

 

ただ、僕自身こういった考えに対して100%反対の立場ではなく、実力をあげるためには、時間とお金犠牲はある程度は必要なもの、と考えています。僕の周りで結果を残して評価も得ている人は、少からず自分へ時間とお金を投資している方々が多いです。でも、もう少し雇い主(病院)から、もしくは厚労省などからのサポートがあってしかるべきかな、とも思います。

医者が働けば周りのスタッフも働くのです。

さて、医師は年間2,000時間の時間外労働が可能となっています。過労死の水準を大きく超える時間です。しかし、「研修医はこのくらいやらないとダメ」といった声もでているらしく、賛否両論あがっているようです。

 

医師限定の話はともかく、実際の現場ではどうでしょうか??医師が診療をするにあたりたくさんのスタッフが必要です。血液検査をします。採血をする看護師と解析をする臨床検査技師が必要です。画像検査が必要なら放射線技師が必要です。内視鏡検査が必要なら内視鏡技師が必要です。心臓のカテーテル治療が必要なら臨床工学士が必要です。緊急手術となれば、麻酔科医やオペ看(オペ室の看護師)

 

このように医療行為には必ず周りのスタッフが必要で、こういった職種の人たちは24時間対応できるようにシフトを組んであります。医師が働くということは我々も多いに働くということなんですよね、実際。

 

地域の急性期診療をバリバリやっている病院では、けっこう簡単この時間を超えてしまうんですよね。実際、僕の昨年の10〜12月の平均時間外労働は60時間を優に超えています。あまり良いことではないのは重々承知です。もっと自分の時間がほしいな、とも思います。

 

現在、ドラマ ラジエーションハウス が放送中ですが、twitter上では、”放射線技師はこんなに暇じゃない。”とかいうコメントも拝見します。ドラマの設定の問題なので、この辺は仕方ないのですが、実際の現場はもっと殺伐としている施設の方が多いかと思います。

 

さすがに、たくさんの時間外労働が露見するとまずいので、見かけの時間外労働を減らすために違法なシフト構成にしている病院もけっこうあるとお聞きします。なので、強制的に「働き方改革」を今の病院のシステムに適応すると、診療行為が立ち行かなくなる施設が相当数あると思われます。それは、その地域に住む方々、そして我々にとって決して良いことにはならないように思います。

 

厚労省はこういった地域を医療システムを守りながら、医療スタッフの労働環境を改善できる提案をしていただけると素敵だな思いますし、我々も、どこに良い落としどころがあるのか真剣に考えなければならないと思います。

 

ということで、今回は病院のおける「働き方改革」について考えてみました。時間はかかると思いますが、地域住民と医療スタッフの両方がハッピーな落とし所を模索していく必要があると思います。